History & Vision

生きる知恵を暮らしの中へ

私たちは、沖縄・宮古島の北に位置する池間島で高齢者福祉事業を行っているNPO法人(いけま福祉支援センター)にて、地域福祉の観点から、高齢者を核とする民泊事業をはじめ、様々な地域づくりの仕事に取り組んできました。地域づくりとは、地域に眠っている、あるいは消えかけている技術や知識、資源を見える形にデザインする仕事です。足もとを丁寧に丁寧に掘っていると、小さな泉が湧いてきました。人々の生きる知恵や技術(島の言葉で「アマイ・ウムクトゥ」)です。それは単に記録して残せば良いものではなく、暮らしの中に埋め戻し、再生する仕組みづくりが必要だったのです。

高齢者による民泊事業で島に活気が生まれました

具体的には、80代以上の漁師から習った魚の方言名約300種類で構成した島のためカレンダー制作(2014年から毎年発行し、この売上で2017年には島の奨学金制度を創設しています)、約半世紀途絶えていた8月15夜の祭りの復活、王府時代から作られてきた大豆(ウツマミ)の復活、味噌づくりや野草、古いアーグ(古謡)等を高齢者から子どもたちへ継承していく「シマ学校」の企画・運営。全戸配布の島新聞(すまだてぃ便り)の発行、島の主立った組織の情報共有・共通の課題解決へむけた組織「島おこしの会」の運営、昨年の夏には、宮古諸島の生物文化を象徴する「アダン」に注目し、その手業や食文化、民俗・歴史・博物学的な視点から情報を共有する「琉球弧アダンサミット」の開催などをしてきました。2015年から3年間は、三井物産環境基金の助成を受けて、島の在来樹木の苗木を育て、防風林や畑垣等の再生を目指す(よみがえりの種プロジェクト)を実施してきました。このプロジェクトを契機として、新たなステップへ一歩踏み出すことになりました。

365匹の海の生きもの写真とその池間名を載せたカレンダーは島内外を問わず好評でした(右は漁師のオジイのメモ帳)
オバアたちを先生に、味噌の付き方や野草の食べ方、昔から伝わるわらべ歌などを習いました
アダンと人とのかかわりを琉球弧の島々から集まった人々と共有しました

奪わず、壊さず、分かち合える未来へ

よみがえりの種プロジェクトで苗作りを行った在来樹木の中心がヤラブ(テリハボク)でした。この種から、 実は上質なオイルが採れ、南太平洋の島々では昔から使われていることがわかってきました。池間島においてヤラブは、古くから伝わる豊作祈願の冒頭で「コトス マッタニヌ ヤラブヌナイダギ・・・(今年蒔いた種がヤラブの実のように)」と唄われるように、この島の豊かさや豊穣のシンボ ルでした。強い潮風にも負けないようしっかりと大地に根を張り、島に恵みをもたらしてくれ るヤラブの木を、島の人々はとても大切にしてきたのです。過疎化・少子高齢化が進む池間島において、先人たちが大切に育んできたヤラブから商品づくりを行い、島の課題を解決できるような仕組みをつくりたいと考えました。

放課後の子どもたちと一緒にヤラブの種ひろいをして苗木をつくっていました
ヤラブの種から苗木を育て、島の共有地に植樹する取組みをスタートしました

タマヌオイルプロジェクトは、NPOから独立して創業した私たち「ヤラブの木」が、自治会、池間島観光協会、老人クラブ、NPO法人いけま福祉支援センターなど島の主立った組織と協働して実施しています。これまでの経験と島の資源を活用して、国産(沖縄産・宮古産・池間産)で、高品質なタマヌオイルを生産し、販売体制を整えていきます。それは必然的に、①高齢者や就労困難な島民に可能な軽作業の「働き場」を提供することができ、②安定した収量と品質保持のために植樹活動を通じて琉球王府時代から島を守ってきた「海垣(=防風林)」を再構築することになっていきます。
他所から資源を奪うことなく、今ある自然を壊すこともなく、必要としている人に仕事を提供して、ユー(富、豊穣を指す池間言葉)を分かち合っていける未来、このような地域デザインを目指して事業を発展させていきたいと考えています。