テリハボクのこと

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テリハボク(オトギリソウ科 Clophyllum inophyllum L.)

海岸に生える常緑樹。環境が良ければ樹高は25メートルほどにも達する高木です。樹皮は厚く灰褐色。葉は対生で硬く、楕円形~倒卵状楕円形、長さ9~18cmほど。中心の主脈がはっきりとして、側脈は細くうすい。照葉木と表記されるように、テリハボクの葉は光沢があってきれいです。

植物図鑑には11~12月に実が熟すとありますが、私たちの観察では年に2回実をつけています。毎年4月頃から実が落ち、6月頃から花が咲き、9~10月ころにまた実が熟して落ちはじめ、11月頃に花をつけます。ただし、年によって若干時期が変動するようで、台風や冬の温度などが開花や結実の時期に影響を与えているのかもしれません(また、農作物同様に、旧暦で観察したほうが良いかもしれません)。

果実は3~4cm前後、若いうちは青梅のようです。熟れてくると、ヤエヤマオオコウモリのご馳走となります。池間島の先輩方も、ほぼ例外なく、この実をおやつとして常食してきました。

分布域は、太平洋諸島、オーストラリア、東南アジア諸国、インド、マダガスカル、国内では琉球列島、小笠原諸島の海岸域にみられます。沖縄では、沖縄島南部や宮古・多良間・八重山などに良く分布し、琉球石灰岩土壌の土地との相性が比較的良いと思われます。

防風防潮林として評価が高く、街路樹としてもよく使われています(宮古島では、トライアスロンの時期(4月)に実が落ちるので、バイク競技に危険だと嫌われることも・・・)。
琉球列島の海岸では、最も海に近い場所にクサトベラ、モンパ、アダン、ユウナなどが繁りますが、いずれも低木です。その後ろにテリハボク、あるいはフクギ、アカテツ、ハスノハギリなど少し高木になる樹種が育ちます。以前は、松やモクマオウが熱心に植樹されてきましたが、今ではかなり衰えています。

根が深く入っていく直根性のテリハボクは、台風時にも枝は折れますが、倒木することはほとんどありません。東日本震災を経験した私たちは、津波防潮機能面でも、テリハボクのような直根性の海岸林を再評価すべきかと考えます。琉球王府時代に築かれた防風林は「海垣」と呼ばれます。

材としては、硬く木目も美しいので、農具等の用具材あるいは祭祀のお椀などにも使われてきました。私たちもお箸を自作して、もう5年近く愛用しています。

確かなことはわかりませんがフクギ(福木)とともに、交易時代に福建からもたらされたと言われています。沖縄ではヤラブ、ヤラウ、ヤナブ・ヤラボなどと呼ばれています。「屋良部」さんとう名字の方もおられますし、石垣島には屋良部岳という山もあります。

タマヌオイルとして定着している「タマヌ」は、タヒチを含むソシエテ諸島での呼称tamanu, のようです。ハワイではkamanu, kamani、サモアではfetau、フィジーではdolno, dilo、マレーシア、インドネシアではbintangorなど呼ばれています。

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