わたしたちが最初に取り組んだのは「社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)」と呼ばれる問題です。足腰が弱って畑に出られなくなったオバア、傷病者等でフルタイムの仕事に就けない中高年、不登校の生徒、コロナ禍等の理由で職を失った失業者など、様々な事情・問題を抱える人々がいます。公的な救済・支援制度もありますが、救われるのはごく一部とういうのが現状です。共同体が健全であった時代は、親族や隣近所の相互扶助によって支え合ってこられましたが、働き世代が島外へ流出してしまうと、それも難しくなってきます。経済的困窮に伴う栄養失調、社会参加の減少や自己肯定感の低下、アルコール依存、ネグレクト、教育格差など新たな課題も生まれてきます。
その解決へ向けて、過疎高齢化が進む地域に必要なのは、特産品を作る大きな工場や数百人単位で訪れるマス・ツーリズムではなく、特別な設備や技術がなくてもできる軽作業、いつでもどこでも自分のペースでできるたくさんの「ちいさな仕事」だと考えました。社会との関わり、少しの経済力、自分にも仕事や役割があるという自尊心が、自立した暮らしの基盤となっています。最高齢88歳のオバアたちを中心に、様々な方が種割り作業に関わってくれています。種集めは、宮古島内の障害者就労支援事業所、清掃ボランティア、通り会、学童などにご協力いただいています。
丁寧に一つ一つハンマーで割った種は、機械処理とは違ってカビや虫喰い、変色・未成熟種子を取り除くことができ、質の高い製品づくりの基礎を担っています。シーズンには、島中のあちこちから種を割る音が聞こえてきます。
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