島の自然へーコモンズの森づくり

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若い世代が島を出て共同体の体力が低下すると、様々な地域のメンテナンス活動も停滞します。旧道や耕作放棄地などは、わずかな時間で外来種のギンネムが繁茂して極相林となります。更新されない海岸林(主に保安林指定域)ではモクマオウや琉球松などの高木が枯れ、荒廃が進んでいます(放置・アンダーユース)。

ギンネムやセンダングサなどの侵略的外来種は、高齢化した人力で草刈りなどを行うことは困難で、必然的に除草剤への依存が増えていきます(外来種と化学薬品)。また、監視の目がゆるむことで、廃棄物の不法投棄や海岸のリゾート開発、希少動植物の過剰採取などを容易に許してしまいます(開発・オーバーユース)。これらの環境悪化は、コミュニティ機能の低下と無関係ではなく、負のサイクルを作りだしているようです。

このサイクルを逆転させるため、長く放置された海岸沿いの共有地にテリハボクを植林し、「ヤラブの森」を造成しています。琉球列島には、古来より「海垣=防風防潮林」を整備して、住居や農地の被害を軽減すると同時に、陸域の栄養塩類を海域に流出させない「抱護」という思想がありました。

テリハボクは防風防潮林として琉球列島を代表する非常に優れた樹種です。島の共有地約4400平米を整地後、自治会など島の主だった団体で構成する「島おこしの会」主催で2018年より毎年100本以上のテリハボクを植樹し、常時メンテナンスを実施しています。これは、豊かな海を呼び戻す海岸林(海垣)の再生と、タマヌオイルの原料となる種子の共同採取地としての里山の再生を同時に成す取り組みです。将来的には、有機JAS認証などを視野に、コモンズの森とそこに連続する農場の整備(島まるごとオーガニック戦略)を進めたいと考えています。

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